p-217「近松物語おさん・Chikamatsu Monzaemon」
溝口健二「近松物語」昭和29年。近松門左衛門「大経師昔暦」を川口松太郎が戯曲化した「おさん茂兵衛」の映画化。経師職人・茂兵衛は主人の内儀おさんに密かに想いを寄せていた。一方、おさんは傾き始めた実家から度々お金を無心されて困り果てる。おさんは夫の以春に頭を下げるが、ケチな以春は冷たく拒否するばかり。 それを知った茂兵衛は、密かに主人以春の印判を使ってお金を用立てようとする。それを腹黒い番頭に見咎められてしまう。主人の印判を不正に使うのは大重罪。茂兵衛は厳しい処罰を待つ間、倉に閉じ込められる。しかし、密かに脱出しておさんのために金の工面へ夜の町へ。 一方、おさんは下女お玉にも手を出そうとする不節操な以春に愛想を尽かす。おさん、家を出て実家へ夜道を急ぐ。その時、偶然に夜道で出会う二人。それからは運命に翻弄されるように二人の道行きが始まる。この設定にストーリーテラーとしての近松の非凡さを感じる。 二人は以春のよこした役人の追っ手に追いつめられるが、小舟で琵琶湖へ逃れる。しかし、逃げるすべはなく、二人は入水しようとする。その時、茂兵衛は死ぬ前にこれだけはと、おさんを想っていたことを告白。 感極まるおさん。おさんも密かに茂兵衛を慕っていた。 「それを聞いた以上、死にたくない」 おさんは小舟の上で茂兵衛にすがりつき、二人は始めて結ばれた。 これは歴代の時代物の中での最高の濡れ場だ。 衣装、髪型、セット、どれを取っても浮世絵から抜け出たような優美さ。映画全盛の昭和29年だから完成できた作品で今では不可能だ。 |