p-161「母と兄・Mother and older brother」 好天の昭和49年5月1日に祖母を在宅で看取った。その日の通夜は久しぶりに家族が揃って賑やかだった。 それは家族が揃った最後の夜で、今も暖かく思い出す。翌々日、祖母の遺骨を紅型の風呂敷に 包み 母と兄は菩提寺のある九州へ旅立った。祖母が死んだ日も翌日も翌々日も、好天で、木漏れ日と 満開の躑躅が 美しかった。都城で中学教師をしていた兄は翌年秋に急死した。だから、この兄の後ろ姿が見納めになった。